《Iridata》と《Supreme》
決勝の地で再び相まみえる

2017.6.2 UPDATE

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Supremeが負け、Iridataが勝った。

GeForce CUP プレーオフウィナーズファイナルでの結果は
多くの視聴者を驚かせた。

今、日本最強を争うはUSGの兄弟チーム。

GeForce CUP オフラインファイナルという最高の舞台で
両雄は再び相まみえる。

text and edit by PACHIMARI.JP

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予想を覆す結果となったGeForce CUP オンライン予選

皆さんは5月20日から2日間にわたって開催されたGeForce CUP: Overwatch powered by Level∞(以下GeForce CUPと称す)のオンライン予選はご覧になられただろうか。

ぶっちぎりの優勝候補として注目されていたUSG Supreme(正式名:Unsold Stuff Gaming Supreme、以下 Supremeと称す)はウィナーズファイナルまで1マップも落とさずにその力を見せつける一方、その兄弟チームであるUSG Iridata(以下 Iridataと称す)はグループステージで1マップを落とすものの、それ以外は全てストレート勝ちでウィナーズファイナルまで勝ち上がった。

Supreme、Iridata共にほぼ完璧な内容で勝ち上がってきたとはいえ、筆者を含む多くの視聴者には「王者Supremeの胸を借りるIridata」という図式が見えていたのではないかと思う。

 

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大会当日の勝利予想アンケート結果。視聴者の大半はSupremeが勝つと予想している


しかし、結果はIridataのストレート勝ち。それどころか圧勝、完勝と言っていいほどの内容だった。
では、Iridataはどうしてこの予想を覆す程の力を身につけることが出来たのか、そしてSupremeはどうして負けてしまったのか。

 

過日、幸運にも両チームへのインタビューの機会に恵まれたため、インタビュー内容をご紹介しながらこの謎を考えてみたいと思う。

Vader選手が語るIridataの強みとSupreme

ウィナーズファイナルでSupreme相手に圧勝することで、一気に日本一を争う立場に上り詰めたIridata。


彼らへのインタビューにはVader選手が対応してくれた。

 

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快く取材に応じてくれたIridataのリーダーVader選手

 

――GeForce CUPにおいて全勝でオフラインファイナルに進んだわけですが、いけるだろうみたいな感覚はありましたか?

「僕個人としては今の調子ならいけるだろうなと思ってはいました。やはりコミュニティの中ではSupreme一強じゃないかというところがあったので多少の不安はありましたが、それでも今の自分たちならいけるかな、とは何となく思っていました。新しく入ったta1yoは『Supremeには無理!』と言ってはいましたが、成長している手応えはあったのでいけるんじゃないかと。」

――ウィナーズファイナルの相手であり、オフラインファイナルの相手にもなったSupremeとは、よく練習されていたのでしょうか?

「実はここ最近、一回もありません。避けているわけではなくタイミングが合わなくて出来なかっただけですが。そのため、Supremeがどのような構成で来るのかわからなかったので、さあどうしようかなという中での大会でした。」

――普段の練習はやはり海外と?

「そうですね、今は韓国と結構やってます。以前は中国とかが多かったのですが、今は韓国相手が中心です。」

――Iridataから見たSupremeとはどういうチームですか?

「国内では試合中の対応力が最も高いチームだと感じます。ウィナーズファイナルでの試合中も、最初はマップに広がる形の自分たちに対して、Supremeは誰を狙うのか決めかねてバラけていたような形だったのですが、試合の中盤くらいからは僕のソルジャーにフォーカスを合わせるように修正してきました。その時は逆に、僕がフォーカスを受けつつ耐えている間に他のメンバーに働いてもらって勝つ、というスタイルに切り替えることで何とか勝つことが出来たのですが、他のチームは僕らに対してフォーカスが定まらないまま試合が終わってしまうような状態だったので、この試合中の対応力こそがSupremeが今までトップに君臨していた理由かな、と思いました。」


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――大会の直前にロール変更や新メンバーの加入等がありましたが、そこから短期間で成績を残すことができた要因はありますか?

「ta1yoが加入してから2~3週間ほどで大会という時間の無いなかで修正の連続でした。ロール変更もあったので、それぞれが『それはダメ』『こうしないと無理』と言い合って言い合って修正し続けていたら大会になっていた、という感じです。DPS陣、タンク陣、サポート陣がそれぞれ要望を伝えあって修正していけました。」

――強くなれるチームと成長が止まってしまうチームの違いはどこにあると考えますか?

「選手のランクでのレート等は個人能力の指標の一つでもちろん重要ではあるのですが、僕が必要だと考えているのは、プランニングや意見に対してそれを頭でイメージできる能力です。プランニングに対してイメージできていないまま練習すると、試合後の反省でも漠然としたまま終わってしまう。そうすると一つ一つの練習と反省が非効率的になってしまって時間の無駄になってしまうんです。また、試合中の判断力は個人能力の範疇になってしまいますし、チームで一緒にプレイしてみないとわからない部分ですね。反省会で、『なぜその行動をしたのか』と聞かれて『わからない』と言われてしまうと反省のしようもないですし、そこが弱いプレイヤーがいると結局チームとしての反省にも繋がらないので伸び悩んでしまうのかな、と考えています。」

――大会で結果が残せていなかった時期はそれが出来ていなかった。そして今はプランニングと反省のサイクルが上手くいってるから成長できている、というわけでしょうか?

「そうだと思います。初期の頃はプランニングどうこうという考えが弱かったと思います。チームでも一人が指摘しまくるような状況は意味がないと思っていて、最低でもそれぞれのロールから指摘の声が上がってこないと反省になっていないんです。現在はプランニングも含め全員が出来ている状態なので、他のチームとの差はそういうところなのかもしれないですね。」

――最後に、GeForce CUPへの意気込みと注目してほしいところをアピールしてください。

「オンラインでの結果と同じように勝ちたいです。目指すスコアは4-0です。僕らの注目してほしい所はチーム力ですね。試合をパッと見るだけだとDPSのキルログが目立つと思うのですが、タンクやサポートがしっかりとDPSが働きやすい環境を作れてこそDPSのキルログが目立つようになるんです。例えばうちのta1yoはかなり目立っていたと思うんですが、『俺なにもしてねー』ってよく言っているんですよ。そういう意味で、DPSが働けている時こそ、それを活かしているタンクとサポートの動きにも注目してみてください。それぞれがそれぞれを活かしあうのがチーム力なんです。」


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おもむろにゼニヤッタのポーズを再現し始めるIridataのメンバー、チームとして仲の良さが伺える 写真右は手前よりdefuse, Aktm, ta1yo, Novady

 

話を聞いてみると、新メンバーの加入とロール変更を経て、全員のモチベーションが高い状態で維持され、とても充実した練習を行える環境になっていると感じた。

その中でも、それぞれが要望を伝えあって一つずつ修正していくというやり方は、細かな部分についても改善出来るという利点と、時間が非常にかかり根気強さや粘り強さが問われるという欠点を併せ持つが、6人中5人がゲーミングハウスにいるという環境も功を奏したのか、彼らにとっては最適な練習方法なのだろう。

また、メンバー全員がプランニングと改善点を伝え合うことが出来るという点も非常に重要で、上記の練習方法の効果を何倍にも高めているように感じる。

さあ、彼らの「チーム力」がオフラインファイナルという場でどこまで発揮されるのか、見届けようではないか。

機動力の高さと柔軟性を備えたSupreme

ウィナーズファイナルでIridata相手に敗北を喫し、ルーザーズファイナルでは大苦戦の末に何とかオフラインファイナルへの切符をもぎ取ることが出来たSupreme。

彼らからはPepper選手がインタビューに応じてくれた。

 

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Supremeの若きリーダーPepper選手 彼も今回の取材に快諾してくれた

 

 

――最近の競技シーンでの評判としては、Supremeが日本で一強だという声も多かったと思いますが、大会での成績は予想していたものでしたか?

「今のメタに自信があるので、大会では上位を狙えるとは思っていました。しかし、先日の大会はhotate、Jasper、そして自分の調子が非常に悪く、大苦戦しました。そういう時こそいつも通りのパフォーマンスを出せるような選手にならなければいけないと感じました。」

――調子が悪かった原因は?

「大会直前に立ち回りを変えたのですが、それが自分のものにならないまま大会が進んでしまい、グダグダになってしまいました。」

――具体的には?

「海外の選手に動きに習って、それを実践しようということになり、トレーサーの立ち回りに自由度を持たせました。一見、ソロランクのような動きに見えると思います。しかし、その立ち回りを意識しすぎたせいか、ダメなタイミングで戦闘してしまったりと上手くいかないままで、大会中に動きを修正することが出来ませんでした。」

 

――理想の動きに対して完成度はどれくらいでしたか?

「大会の時は・・40%です。考えすぎてプレイに集中できていなかったのだと思います。今は60%くらいまで仕上がってきたと感じているので、オフラインまでに90%以上の完成度にします。」

――現在の練習はどのように行っていますか?

「主にスクリムです。keisuke3が用意した動画を数本みて、今日はこの作戦をしよう、と目標を立ててやっています。」

――研究と実践と反省はどのような割合でおこなっていますか?

「主に実践と反省ですね。研究自体は参考となる動画を個々で見る程度で、そこからまずは模倣していきながら自分たちに合うように修正していく感じです。昔は研究に時間かけてたのですが、今のSupremeは写し取ることが上手いので、実践と反省に時間を注げる。修正しながら自分たちのものにしていくスピードが速いのが強みなんだと思いますね。」

――練習試合の相手は海外メインですか?

「そうですね。大会直前くらいからは海外がほとんどで、台湾で活動しているチームなどとも試合をしています。」

――1強状態だった要因はなんだと思いますか?

「昔からダイブ構成が得意だったというのが一番だと思います。あとは声出しもですね。Jasperが苦しい時でも一番声を出していると思います。逆に静かなのは自分とhotateさんかな。」

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――Iridataについてどう思っていますか?

「大会までは、Iridata側がロールチェンジの直後だというのもあって、勝てるつもりでいました。負けてからは当然なのですが、本当に強いチームだなと実感しました。Aktmさんとta1yoさんのDPS2人の息が合っていて素晴らしいです。今現状、日本でずば抜けて強いチームだと思っています。ただ、オフラインファイナルでは負けるつもりはないですけどね。」

――最後に、GeForce CUPへの意気込みと注目してほしいところをアピールしてください

「やるからにはもちろん負ける気はないので、2週間で仕上げて、絶対に勝ちます。注目点は、チームの作戦です。セットプレイやアルティメットの使い方を観てください!」

 

話を聞いてみて感じたのは、Iridataとは対照的なスタイルのチームだということ。
ダイブメタに変わった後の国内シーンを席捲したSupremeだが、個の力が非常に優れているからこそ今のメタを得意と感じているのではないだろうか。

ダイブメタは機動力の高さが特徴であるため、試合中の判断力が重要になってくる。攻める退くといった大局的な判断はチームの決定事項だが、個々がある程度自由に動けてしまう分、一瞬の判断をチーム全体に共有するのが難しい。
だからこそ、状況判断能力という「個」の能力が重要になってくるのだ。

しかし、当然ながらこの戦い方には弱点がある。ウィナーズファイナルでの敗北やルーザーズファイナルでの苦戦の要因は、「状況判断の軸」が定まっていなかったことだ。
軸となる考え方、動き方を見失ったために、本来の長所であるゲーム内での修正力が発揮されなかったのだろう。

チーム全体で戦い方のコンセプトを完璧に共有できていれば、極論だがチームでの判断は不要だ。
だからこそ、コンセプトを見失ってしまうと、個々の判断に比重を置いていた分、迷走したままあっさり負けてしまうのだ。

苦しかったプレーオフから二週間。
個々の判断力を取り戻せたのか、はたまたチーム判断の比重を増やしてカバーしてくるのか。

男子三日会わざれば刮目して見よ。

 

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当日は観客に熱い試合を魅せたいと語るPepper選手 オフラインファイナルという決戦の舞台を楽しみにしているようだ

 

対照的なIridataとSupreme

両チームのインタビューは如何だっただろうか。

改めて言うが、IridataとSupremeは対照的なチームだ。

Iridataのアプローチは、チーム全体で動きを指摘し合って修正していくなかで、個々の動きが改善されていく、というシンプルだが堅実な方法だ。
チームの理想の動きがあり、個が動きを修正し、チーム全体が修正されていく、という流れである。

一方、Supremeのアプローチは、個々が理想の動きを模倣していくなかで、チーム全体の動きに合うように修正していく、という逆のプロセスを踏んでいるのがわかる。

個の理想の動きがあり、チーム全体でそのパーツを組み合わせて、Supreme流の動きに落とし込んでいく、という流れである。

それぞれ一長一短の手法ではあるが、どちらも自分たちにあったやり方を見つけ出しているのは流石といったところだろうか。
磨いたチーム力で個の力を引き出す《Iridata》、個の力を組み合わせてチーム力とする《Supreme》。

誰が為に拍手は鳴る

Iridataはオフライン経験が豊富なメンバーが揃っているのに対し、Supremeはメンバー全員が同時に集まるのは今回が初めてだ。
この点も非常に対照的といえるだろう。

連携や声出し、メンタル面といった部分は環境に左右されやすい。普段と違う環境で普段通りをするというのは想像以上に難しいことだ。
この違いがどれだけの影響を及ぼすか、といったところも注目したい。

果たして、GeForce CUPオフラインファイナルの会場で勝利の女神が微笑むのはどちらになるのだろうか。
オフラインファイナルを会場でご覧になる方は、是非応援する選手たちに歓声と拍手を届けてあげて欲しい。

選手たちがプレイ中に声援を聞ける機会は多くないのだから。

そして、オフラインへ勝ち上がった選手だけが持つ特権なのだから。

 

 

取材協力:Vader(USG Iridata), Pepper(USG Supreme)
Unsold Stuff Gaming Official website:https://www.unsoldstuffgaming.com/
画像引用:JCG