《USG Supreme》の帰還
彼らの苦難と成長の軌跡

2017.4.25 UPDATE

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今、日本で一番強いチームはどこだろうか。

 

多くの人は、直近の二大会で連覇を果たしたUSG Supremeと
答えるのではないだろうか。

 

彼らの実力は本物だ。
ただ、これまでの道のりは決して順風満帆だったわけではない。

 

本稿では、彼らのこれまでの足跡をメンバーのkeisuke3、Pepper両選手と共に振り返り、
強さの秘訣に迫ってみたいと思う。

text by Nonke
edit by PACHIMARI.JP

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チーム結成、そして初期Supremeメンバーの集結

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プロゲーミングチームUnsold Stuff Gaming

 

2016年7月8日、プロゲーミングチームUSG(正式名、Unsold Stuff Gaming)から発表されたOverwatch部門発足の知らせは、多くの人を驚かせた。
続々とOverwatchに参入するプロゲーミングチームの中でも異例の3チーム体制。これだけでUSGの本気度を量るには十分だろう。

そうして結成された「Iridata」「Maglia Roza」「Supreme」の3チームは、発表後すぐの7月に開催された大会「Overwatch Championship Series」の予選で決勝進出の4枠のうち3枠を獲得することに成功。全てが順調に思えた。
だが、同大会のオフライン決勝では3チームとも優勝を逃してしまい、続いて8月上旬に開催された「JCG Master 2016 Summer Finals Day1」では、3チーム全てが決勝前にトーナメント表から姿を消すことになってしまった。

「大会で結果が出なかったことでチームやメンバーの見直しが必要と考え、自分から再構築を提案しました。」(keisuke3)

こうして上位チームに対抗するために行われた再構築では、Pepper、keisuke3、mischyの三選手はそのままSupremeに残留し、Maglia Rozaからだいりてん選手が移籍、そして横の繋がりでJasper選手とDebuff選手が加入、多忙のmischy選手の穴を埋める形でMaTtyo選手が加入し、現在のSupremeの原型が完成することになる。

成長、不運、メタの変化

「Supremeの基礎メンバーが揃ってからはスクリムでもかなり勝てるようになり、大会でもいけるという自信がついてきました。」(keisuke3)

 

筆者の主観だが、2016年8月中旬から10月にかけてのSupremeは間違いなく日本一強いチームだったと確信している。その強さを支えていたのは、当時日本一のラインハルトと評判だったDebuff選手、そして現在においても日本一のザリアと評判のJasper選手、二人のタンクを基軸にした戦術だった。
Overwatch発売当初から練習していたチームを一足飛びに追い越していった強さは、磨き上げられた個人技の賜物と言えるだろう。

 

しかし、彼らにとって不幸だったのは、その強さを披露する機会が無かったことだ。再構築後の大きな大会は11月の「NVIDIA CUP」を待たなければならない。
当時の彼らの圧倒的な強さを知るのは、練習試合で直接打ちのめされた者だけだ。

 

すぐに大会が無くても次の大会で結果を出せばいい、という意見はあるだろう。
実際、「NVIDIA CUP」でも結果だけを見ると準優勝とかなりの好成績に思える。しかし、この時彼らにとって致命的な事態が起きていたのである。それはOverwatch最大の特徴であり、面白さと難しさの根幹部分、「メタの変化」である。

 

11月16日に配信されたパッチは後に3タンクメタと呼ばれる構成を到来させるもので、それまでの環境を一変させるものだった。それは同時に、ラインハルトとザリアを軸にした戦い方を突き詰めていたSupremeに大きな方向転換を強いることにもなった。

 

直後に開催されたユーザー大会「Weekday Tournament」では優勝するものの、徐々にメタへの対応を進めている他のチームに差を付けられる形となる。

 

  

二大会続けての決勝進出、実力を見せつけるが・・・

 

「アタッカー担当のだいりてんがロードホッグ、ザリア担当のJasperがD.VAをやることになったんですが、メタへの対応が上手くいかず、練習方針等もチーム内で食い違うようになってしまいました。」(keisuke3)

 

ザリアのバリアを付けたラインハルトのチャージを起点に強引に戦闘を始めることが出来たそれまでのメタ、D.VAとロードホッグが出てくることでラインハルトが盾を構え続けなければならなくなった新しいメタ。

 

個人技が攻撃的なメタとマッチしていて勝てていたが故に、守備的な連携力が問われるメタへの適応に苦慮したのだろうか。彼らの歯車は狂い始める。

 

12月23日にkeisuke3選手が方針の違いから脱退。代わりにPepper選手の知り合いであるsena選手が加入するが、2017年1月14日の「JCG Master 2016-2017 Winter Finals プレーオフ Day1」では4位に終わってしまう。

 

そして、2月19日にDebuff、mischy両選手が実生活の多忙を理由に脱退、21日にはMaTtyo選手が脱退し、チーム活動もままならない状態になってしまう。

再構築、再び

脱退が相次ぎ、一時は競技シーンから姿を消したSupreme。そんな彼らが復活を果たせたのはメンバーの精神的成長がきっかけだった。

 

「元々自分が中心となって作戦を決めていました。その中で、更にプロ意識を持って厳しくやっていこうという自分とメンバー間の温度差が原因で一度は脱退となってしまいました。ただ、その後も脱退が相次いだ結果、チームとしての存続すら危ぶまれる状況になり、残ったメンバーからもう一度声がかかりました。」(keisuke3)

 

「一度は温度差が出来てしまったけど、作戦を考えたりメンバーをまとめ上げてくれていたkeisuke3が抜けてしまったのは嫌でしたし、抜けてから改めて必要だと感じました。そこで、メンバーの脱退が続いてチームが大変な状況になっているから戻ってきてほしい、と声をかけました。」(Pepper)

 

「自分が不満だったのは、必要な個人練習もしないで時間になったら漫然と練習試合をやるだけ、という姿勢でした。そこを直せるかどうかだけが自分の条件でした。」(keisuke3)

 

「絶対に大丈夫、俺たちは変わったから、そう答えました。keisuke3はそれを信じて戻ってきてくれました。」(Pepper)

 

どのチームでも練習方針や意識の違いで揉めることはあるだろう。そこで、それを乗り越えられるチームは強いチームだと思う。
一度は脱退にまで至ってしまった彼らだったが、残ったメンバーが反省し、成長することで乗り越えたと言ってもいいのではないだろうか。

日本一のチームへ、そして世界で戦えるチームへ

Overwatchが上手い6人が集まっただけのチームから本当の意味でのチームへ、彼らの成長を見せる機会が3月、4月にやってきた。

 

3月に行われた「True Overwatch Elite #3」では、6人目のメンバーが確定していなかったため、別名義の「僕らのユリイカ」というチームで出場。優勝を果たすが、サブアカウントでの出場だったため物議を醸すことに。

 

「大会があるから記念で出よう、という軽い気持ちでの出場でした。チームでの練習試合も1ヶ月以上出来ていなかったし、メンバーが揃わなかった以前のユーザー大会でも同じようにサブアカウントで出場していたため、当時は深く考えていなかったのですが、今は反省しています。」(keisuke3)

 

外部から一人を招いての即席チームで更に練習も2日程度だったため、勝てるとは思っていなかったというが、それで優勝できてしまうのだから恐ろしい。そして、この優勝は彼らに方向性が間違っていないことを確信させるものだった。

 

その後に続いて4月に開催された「OMEN CUP by HP」では、1マップも落とすことなく完全優勝。新メンバーのhotate選手と、その加入に伴いアタッカーからタンクへのロールチェンジを果たしただいりてん選手も不慣れさを感じさせない活躍を見せた。

 

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大会を通して全勝優勝、彼らの実力は本物だ

 

「今はチームの雰囲気もすごく良い。メンバーの姿勢と意識も変わって質の高い練習が出来ていると感じます。」(keisuke3)

 

だが、元々個人技のある選手が揃ったチームだけに思わぬ苦労もあったようだ。

 

「2016年は個人技で勝てていたと思います。それだけに、個人で何とか打開しようとしてしまう悪い癖を抜くのに苦労しました。最近ようやくチームとしての戦いが出来るようになってきたと思います。」(keisuke3)

 

海外のチームは個人技のレベルも高いが、それ以上にチームとしての練度が高い。一方、日本のチームは個人技がある選手はいても、チームとしての動きが出来ていない事が多いと感じる。
それだけに、Supremeの強さには期待させられるものがある。

 

ちなみに、筆者は彼らの戦いぶりを見て、2016年のSupremeとは異なる印象を受けていた。
2016年は堅牢な壁が押し迫ってくる印象だったのに対し、2017年のSupremeはスライムのような柔軟性で敵を飲み込んでいく印象だ。

 

筆者がその漠然としたイメージを伝えてみると、keisuke3選手はわかりやすい形で答えを返してくれた。

 

「今まではDebuffのラインハルトを軸に作戦を考えていました。しかし、今はメンバー全員が軸になれるように作戦を考えています。そうすることで、その時々でアルティメットが溜まっている人を中心にした戦いが出来るようにしています。」(keisuke3)

 

どのチームにもエースと呼ばれる存在がいると思う。
昔のSupremeはラインハルトがエースでありチームの作戦の中心だったのだろう。

 

しかし、今のSupremeは6人がエースだ。

 

Overwatchというゲームでは、全く同じ状況が再現されるということがほとんどない。
それは、敵味方のヒーロー構成、アルティメットの状況が刻一刻と変化するためである。
だからこそ、真に強いチームになるためには、メンバー全員に状況判断力と対応力が求められ、それぞれが最適なタイミングでチームの軸にならなければならない。

 

シンプルだが奥の深いテーマだとは思わないだろうか。
メンバーの誰からでも試合を作れるように練習を重ねている彼らからは、メタへの対応に苦しんだ過去の姿は見受けられない。

 

「メンバー全員が軸。」
この意識こそが彼らの強さの秘訣なのではないだろうか。

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韓国アマチュアチームが集結する「OVERWATCH CLAN MATCH」 この大会は彼らの試金石となるだろう

 

今後は海外との戦いも視野に入れて活動していくSupreme。
4月26日からは韓国ウリドンネリーグ主催の「OVERWATCH CLAN MATCH」に出場することが決定、韓国アマチュアチームを相手に腕試しする機会を得た。

 

日本一のチームが世界へ羽ばたくための足掛かりに出来るか。
そして、世界の舞台で戦えるチームに成長していけるのか。
期待して見ていきたい。

 

 

取材協力:keisuke3(USG Supreme), Pepper(USG Supreme)
Unsold Stuff Gaming Official website:https://www.unsoldstuffgaming.com/
画像引用:JCG, Twitch