実力と人気でシーンを牽引した
《DeToNator.Overwatch》の歩み、
そして再び世界へ

2017.4.9 UPDATE

logo

「DeToNatorが海外のプロリーグへ出場する」

この春、そんなニュースが耳に入ってきた。

今、日本発のプロゲーミングチーム・DeToNatorが、
公式台湾プロリーグ『Overwatch Pacific Championship』に出場している。

2016年1月にOverwatch部門を設立したDeToNatorは、これまで何度も海外へと遠征を繰り返してきた。

その記録だけを見て、「DeToNatorは強いチームだ」と言ってもいい。

PACHIMARI.JP最初の記事として、泥臭く試行錯誤を繰り返し、
ひたむきに挑戦をしてきた彼らの姿について、振り返ってみようと思う。

text by オオギ
edit by PACHIMARI.JP

facebook   twitter
SHARE

 

img

台湾プロリーグに挑戦するDeToNator.GOLD

 

最近、esportsの情報を読み漁っていると、「世界」というワードがよく出没する。

日本国内のシーンは近年徐々に盛り上がりを見せているが、「世界に挑戦し結果を残す」ことができれば、さらに注目を集め、シーンの成長を加速させることができるかもしれない。


「よく『世界を目指す』と言っているじゃないですか。他の方々も『世界』という言葉を出しますよね。今まで様々なゲームタイトルでパブリッシャー主催の開く大会があって、勝つと世界大会行く。私としては、それは『世界と戦っている』ということとは違うと考えています。それはあくまで日本代表として行っているだけで、私の言う『世界で戦う』ということは世界のトップレベルのリーグや強豪が集まるところで『常に戦う』ということ。私のこだわりはここなんです。」(江尻)


プロゲーミングチームDeToNator代表の江尻氏は、海外のシーンに身を置き、戦い続けることこそが「世界で戦うこと」だと定義する。そして、DeToNatorはまさに世界で戦ってきたチームだ。

第1期《DeToNator.Overwatch》

img

世界各地で活躍したDeToNator.Overwatch第1期

 

2016年1月、DeToNatorは正式リリース前にOverwatch部門を設立。第1期のチームには、リーダーYamatoNをはじめ、他タイトルで活躍してきたキャリアを持つ選手がそろった。当時からチームに所属する選手は「ある意味、すべてが“用意されていたチーム”でした。」と振り返る。

 

League of LegendsやDota 2、Counter-Strike: Global Offensiveなど、世界で競技タイトルとして採用されているタイトルの一部は、海外で先行してリリースされ、数ヶ月から数年遅れて日本でスタートすることが多かった。世界の成長スピードは速く、スタートの時点でついてしまった差を埋めることは容易いことではない。

 

そんな状況のなか、2016年5月24日(日本時間)にOverwatchは全世界同時にリリースされた。

 

「とにかく一緒のスタートラインに立つのでOverwatchならチャレンジ出来るだろうと思いました。その当時は『日本のなかで頑張ってどうやっていくか』を考えていたんですが、世界同時に同じような情報が入り、プレイができる、という状況で、これはチャレンジする価値があるんじゃないか。そう思ってOverwatch部門をスタートしました。」(江尻)

 

第1期DeToNator.Overwatchは、国内大会でその圧倒的な実力とスター性を見せつけるだけでなく、台湾、そして韓国、中国の大会やイベントにも積極的に参加し、海外の強豪チームたちとしのぎを削っていた。この一連の活躍について「かっこいい言い方すると予定通りなんですよね。」と江尻氏は言う。

 

「世界を意識するには自分たちが世界に向けて営業しないといけないんです。『僕たちこういうチームなんですけど、頑張るのでやらせてもらえませんか?』とお願いにいったりとか。それをやったおかげで、日本にはDeToNatorってチームがあるんだって覚えてもらって、少しずつですが自分たちの知名度をあげていきました。」(江尻)

 

順風満帆に思われたDeToNator.Overwatchだが、同年10月に第1期チームは活動を終了した。突然の発表にファンたちは騒然としたが、チーム内では早い段階からこの区切りを意識してたそうだ。

 

「中国のAPAC Premierが総決算というか、第1期の一つのゴールだったんです。はたからみてると、トッププレイヤーだし練習すればなんとかなる、頑張れ、と思うんですけど、やっぱり世界との差は大きかった。自分たちが世界にくらいついていこうと思いながらやっていても、追いつくのがやっとになってたんです。当初は韓国でも僕たちのほうが強かったんですよ。それがわずか数ヶ月で一瞬にして抜かれちゃったりとか。中国でもそうで、っていう現実を選手達にとってはもの凄い負担でした。」(江尻)

 

空気、食べ物、人間。取り巻く環境が大きく変わる異国の地で戦う大変さ、精神的なストレス。そういったものを感じながら、さらに技術的に勝てない状況が続けばチームの中でも色々なマイナスな要素も出てくる。APAC Premier出場の時点でチームの状態は悪く、帰国後にTOKYO GAME SHOW 2016で行われた国内トップレベル同士がぶつかるエキシビジョンマッチでも敗北を喫した。

 

「ほんとに世界っていうものの壁に思いっきりぶつかったと思うんです。肌で感じて自分が足りないもの、こうしなきゃいけないもの、というのが目に見えたと思います。誰かと誰かが喧嘩したとか、雰囲気が悪くなったとか、そういうことはなくて、みんな自分自身を振り返ったときにリアルな現状を理解した。そこで、進む方向とか考える方向が変わっていったんです。」(江尻)


第1期チームの終了に伴い、選手たちは別々の道を歩み始めた。

 

競技活動を引退しストリーマーやマネージャーへ転向する選手、チームを脱退する選手、そしてもちろん競技活動を続ける選手もいた。

 

「みんなで話し合って納得した結果でした。ただ、YamatoN選手とはかなり古くから一緒にやってきたので、彼が選手でなくなることに寂しさはありましたね。」(delave)

戦える集団にするための、徹底的なチームビルド

img

チームビルドに力を入れた第2期チーム

 

そうして、DeToNator.Overwatchは第2期チームを経て、そして現在の2チーム体制へと組織の作りを変えてきた。

 

第1期とは打って変わり、第2期は「時間をかけてもいいからチームを作っていこう」という育成に重きを置いたチームとなった。積極的な大会出場よりもチーム育成に時間を注いだため露出が少なく、ファンからはチームの低迷期にも思われていたが、着実にチームは強い選手を育てていた。

 

「第2期は、とにかく今まで以上にゲームにきちんと打ち込めるかどうかが重要だったんです。うちには元々、台湾に練習場があるのでゲームにしっかり打ち込める人をベースで集める方針でした。」(江尻)

 

第2期からは、韓国人のSENSEI選手も加入。世界に立ち向かうチームとしての土台作りが始まった。第1期の反省点や培ったノウハウを元に、「世界で戦うためには何をしないといけないか」を徹底的に考え、チームを再構築。日本や台湾でブートキャンプを行い、戦える集団にするために、ひたすら時間を費やした。

 

そして、その結果として生み出されたのが、2017年2月11日に発表された「DeToNator.GOLD」「DeToNator.BLACK」の2チーム体制だ。

 

「2つチームを作ると1軍2軍で見られてしまうのですが、全然違います。GOLDは『海外に行くよ』となったら、問答無用で行きます。行かなければならない。つまりゲームにすべてを注いでくれるメンバ-でなければ入れないんです。」(江尻)

 

DeToNator.GOLDは完全にフルタイム性で、ゲーム中心の生活が求められる。一方でDeToNator.BLACKは学生など、ゲーム以外の生活を送りながらゲームをプレイするメンバーが中心となっている。こちらは国内活動をするチームで、選手の育成にも力を入れているため、伸びしろがある選手もそろっており、人数も多い。

 

「例えば、GOLDで5人は海外に行けます。しかし1人は学校があるからいけません、ではアウトじゃないですか。ベースが違います。BLACKは日本をベースに活動します。みんな働いていたり、学生の人もいます。リアルとゲームをバランスよくやって、自分のモチベーションからチームの活動を行うのがBLACKなんです。」(江尻)

再び世界へ挑む

img

台湾プロリーグに挑戦するDeToNator.GOLD

 

2017年4月8日からDeToNator.GOLD は、台湾で開幕したBlizzard Entertainment主催大会『Overwatch Pacific Championship』へと出場している。

 

頻繁に台湾の大会やイベントに登場することもあって、今となっては「DeToNatorと言えば台湾」というイメージが定着しているが、そもそも何故活動の場所に台湾を選んだのだろうか。

 

「(活動場所を決める際の)基準は『選手にとってどの場所が幸せか』で判断しています。やっぱり、現状Overwatchで一番幸せなのは台湾だと思っています。ヨーロッパやアメリカ、韓国にチャンスがあれば行ってみたいですけどね。」(江尻)

 

最初は台湾での生活に不安を抱えていた選手たちも、気づけば「台湾最高です」と言っている。そんな魅力が台湾にはあるという。

 

「応援やファンの皆さんの暖かさが違いますね。街中でご飯食べていたらファンから声をかけられたりとかもする。自分たちのプレイによって一喜一憂してもらえるし、サインなんかも求められるし。台湾は、パブリッシャー含め、環境すべてが選手ファーストです。
平等であり、パブリッシャーとチームとの問題も感じたことがない。AVAもOverwatchも一緒ですが、すべてがフェアです。」(江尻)

 

「日本では、esportsは一部の人がやっているイメージがありましたが、台湾では多くの人から親近感を持たれているシーンのように感じます。応援の声が熱を持っていて、ファンとの距離も近いですね。引きこもってゲームをやっていると社会との距離ができてしまうんですが、台湾では社会とつながっていると強く実感しながら練習しています。」(delave)

 

台湾ではDeToNatorのように他の国から来たチームも平等に扱い、大切にしてくれるという。「選手が一番幸せな場所はやはり、esportsで発展している国」だと江尻氏は語る。

 

「Blizzardのスタジアムは、今まで見たなかでは抜群ですね。構想段階からお話は伺っていたのですが『とにかく選手が輝くために作る』と担当の方が言っていたので、その思いがちりばめられているんです。もう決まっていることなので隠すことはないのですが、リーグではホーム&アウェー方式が採用されていて、ホームのチームになった場合はスタジアムを使って、チームファンに向けてイベントをやって良いことになっています。使える日付が決まっていて、各チームに開放するんです。」(江尻)

 

4月8日から、この台湾のスタジオでリーグは行われている。11週間・約3ヶ月にわたる長い長い戦いだ。

 

「リーグ戦の序盤なので、特定のチームに対しての対策よりも、今は僕たち自身ができる戦略を増やす練習をしています。Blank Esports(オーストラリア)、Flash Wolves(台湾)は強豪なので、僕たちのこれからの練習次第だと思いますが、他のチームたちとは十分戦えるレベルだと思っています。」(delave)

 

第1期チームでは「世界の壁」を感じたというDeToNator。アジアの強豪たちの集まるこのリーグで、彼らはどこまで勝ち進むことができるだろうか。

試行錯誤を繰り返しながら世界へ挑む、これからのDeToNatorの戦いをぜひ見届けてほしい。

 

 

取材協力:江尻 勝(DeToNator)、delave(DeToNator)
DeToNator Official website:https://detonator-gg.com/
画像引用:Blizzard Estadium Facebook Page